繭人形シリーズ 午年です 
今月のフォト 2月 
折々の記 107 病室のつぶやき(点滴) 
蚕と絹のあれこれ50 伊豫蚕業沿革史その1

蚕と絹のあれこれ51 伊豫蚕業沿革史その2

折々の記 108 農業にかかわるお仕事
ひとくちに農業に関する県の仕事といっても、米麦や野菜、果樹、花などの栽培に関する幅広い分野があって、品種や技術の開発研究や農家への普及、生産を振興する施策、農地の法的事務、農地の整備といった五つの部門があり、それぞれに専門の技術職員がいます。
通常は採用された部門でずっと働くわけですが、私の場合はなぜか試験研究と普及、生産振興といった三つの部門を渡り歩き、気がつけば定年を迎えていました。
その後、非常勤で研究指導をしていた時のこと。
農水省の切れ者といわれたある局長(のちに事務次官)が大胆な政策を打ち出しました。
それはすべての都道府県に「農地を借入れてまとまった形にして担い手に貸付け、法人化を進めるデベロッパーのような組織を作らせる」というものでした。
そして思ったのは、農地の多くが山間部にある本県ではとても成果は見込めないだろうと。
県では国の指示を受けて(社)農地中間管理機構(以下機構)を立ちあげますが、この種の面倒な仕事を引きうける人はまずいません。
窮した県は手あたり次第に電話かけまくり、最後に暇そうにしている私に白羽の矢があたったようです。
後輩の苦衷を察して引き受けることにしましたが、仕事は農地の仲介や法的事務さらには農地整備にかかるもので、これまで関わったことのない分野でした。
国民の基本食糧である米の生産を将来にわたって支えるには個人の担い手だけでなく大規模な農業法人を育て、それらが米生産の太宗をしめる姿にするという考え方には賛成です。
ただし、それは東北や北陸、北海道などこれまでに一枚の水田が1fもある大区画化を進めてきた米主産県での話です。
猫のひたいのような小さな水田が山間部の川沿いにへばりつくような地域ではとても実績があがるとは思えません。
そんな水田を集めても大型の農機は入れないし手間がかかるだけ。農地を集めて利用できる担い手もいないのです。
それでも一定の水田がある盆地では農作業を請け負う任意の集団が農地を守っていますが、メンバーの高齢化が進んで集団の維持さえ難しくなっています。
話を聞くと「借りてほしいと頼まれても手が回らないから断っている」「作業がしにくい小さな田んぼや良い米がとれない田んぼは持ち主に返している」「それに地代を払ってまで農地を借りる時代ではない」といいます。
たしかに機構が借りて担い手に集めた水田のほとんどは借地料が無料でした。
さて、機構が動き始めると国は毎年、各県の実績に順位をつけて公表をはじめました。
思った通り私共の機構は最下位あたりをウロついていたので農水省に呼び出されては叱咤激励を受けました。
そんな中で本県が全国一の生産量を誇り、主力となるのがみかんをはじめとする柑橘栽培です。
樹園地は山の斜面に広がり、収穫した果実はコンテナに入れてモノレールで平地へおろすほか、病害虫の防除や潅水は園地に張り巡らしたスプリンクラーで行うなど省力化を図っています。
経営規模は一人あたり一〜二haが限界ですが、日当たりがよく排水のよい南向きの園地であれば良い果実がとれて五百万円以上の所得が見込めます。
ただ、そんな優良園地でも最近は農家の高齢化によって廃園化するスピーが加速しています。
一方で柑橘栽培に新たに参入しようとする若者は樹園地を借りるのに苦労しています。
そのため「機構がリタイアする農家の優良園地を借り受けて農協に貸付け、農協はそこで優良品種に改植したのち新規参入を希望する若者に二、三年かけて研修させ、独り立ちする際に機構は農協との貸借を解消して新規参入者に貸し付ければ遅滞なく経営を始められるのではないか? 」
そうした提案を県下の農協に投げかけてみたところ、柑橘の主力農協がこぞって賛同してくれたので事業の連携協定を結んで取り組みを進めました。
農協にとっては地域の柑橘生産量を維持・確保できるほか、地権者は自分の園地が守られるし、新規参入する若者は技術をマスターしてスムースに経営に取りかかれます。
さらに若い果樹農家たちが集まって会社をつくり、機構を通じて個々の園地の半分を会社に貸付け、軽トラックが出入りできるような作業性のよい園地に改良したいという申し出もありました。
会社は果実をジュースに加工したり作業の請負をして収入を得るというもの。
その園地整備に必要なお金は、機構を通じて貸借する農地の面積などによって国・県・市町が全額を負担します。こうした取り組みをみたのでしょう。機構の事業に取り組みたいという若者たちが増えています。
機構事業の目的は主に米づくりにおける担い手への農地集積と法人化ですが、傾斜地にひろがる柑橘生産でも事業を活用できたのは意外でした。
そして機構が扱った農地の面積は小さいものの思わぬ効果がみられたうえ、浅学ながらすべての農業部門を経験できたのは悪くない気がしています。
