折々の記 5

 紫陽花


   梅雨の季節はアジサイが似合っている。庭にもかなり前から植わっている株がある。  雨にぬれたアジサイにはアマガエルがつきものだが、このところ見かけない。庭にいるはずの三匹のアマガエルは、鳥の目を気にして目立つアジサイを避けているのかもしれない。

 子供の頃  『アジサイの花の色は土で変わる』と教えられたが、今も本当のところはよくわかっていない。土が酸性ならアルミニウムが吸われて色が変わると聞くが、色素のある細胞液はそもそも弱酸性なのでさほど変化するようには思えない。案外、花の老化や遺伝的なものによる変化なのかもしれない。

   それによく『部屋にはアジサイを飾らないように』とも言われた。
   なぜだか理由はわからないが、つぼみや葉に青酸系の物質が含まれるため、まちがって口に入れないように注意していたのかもしれない。
   もとは、路傍や庭の片隅で咲いていたアジサイだが、花を愛するヨーロッパで本来の魅力が引き出された。 ピンクであったりクリーム色だったり、カラフルな色あいのものが増えているほか、ボリューム感も増している。生け花やブーケなどにも使われているほか、ホテルやレストランでも飾られている。
   アジサイにとってはヨーロッパに行ったことで、ずいぶん飛躍の道につながったようだ。