プロフィール


 タイトル       立ち止まってみてごらん

                  

 いつの間にか愛媛に住むようになって半世紀近くになりました。

 通常、県の名前に愛しい媛といったような優美な名前がついていること自体が珍しいうえ、県民性はいたって穏やかで女性的な土地柄といえます。

 明治維新の際に、西日本で唯一、幕府側について朝敵になったため、当初は見せしめのように石鉄県という名がつけられました。でも気候が温暖なうえ、人の気質ものどやかなことから、のちに古事記から『伊予は愛比売(えひめ)と云い』を引用して愛媛と改められました。

 いま暮らしている町は松山市のなかでも目の前に瀬戸内の斎灘(いつきなだ)がひろがり、後背には高縄山系がせまる風早という地域です。


 日々、身近な自然に接しながら、気づいた事柄を生物学的な視点を交えながら「折々の記」につづってみました。作物や虫たち生き物に関する話しが多いと思いますが、短編なので気軽に読んでみてください。


  また、日本では昔から蚕を育て、繭から糸をとって絹織物を作り、草木で染めて自然の色を身につけてきました。染色の材料は多くが薬草でもあり、それを衣に浸み込ませて身を守ろうと考えました。でも今、それらを支える養蚕や製糸、染色といった技術が消えようとしています。一度失えば、その技術を再び手に入れることは容易ではありません。『蚕と絹のあれこれ』と題して書いてみましたので、興味ある方の目にとまれば幸いです。


 また、繭を使って人形づくりをしている「繭工房ゆい」さんの作品を掲載しているほか、瀬戸内の日常的な風景を今月のフォトとして載せています。


  略歴  池上正彦

        大阪市生まれ 1952年

            東京農工大学農学部蚕糸生物学科卒 1977年

        愛媛県農林水産研究所長      2010年

        (財)えひめ農林漁業振興機構 参与  2019年